ドラム式洗濯機に洗濯物をぎゅうぎゅうに詰めてしまい、後悔した経験はありませんか。
節水や乾燥機能が便利な一方で、長年使ってきた縦型と比べて「あまり入らないのでは?」と感じる方も少なくないようです。
しかし、洗濯物の量はどこまで入れていいのか、正しい知識がないまま洗濯を続けると、衣類の乾燥が不十分になったり、運転中に大きな音がしたりするだけでなく、最悪の場合、入れすぎが原因で水漏れや故障につながることもあります。
この記事では、パナソニック、シャープ、日立など主要メーカーの容量12kgや11kgといった機種にも触れながら、ドラム式洗濯機をぎゅうぎゅうに詰めてしまう根本的な原因と対策を徹底解説します。
正しい使い方に関するコツや注意点を押さえ、日々の洗濯を快適で効率的なものに変えていきましょう。
ドラム式洗濯機のぎゅうぎゅう詰めが引き起こす性能低下と故障リスク
洗濯物の量はどこまで入れていい?
ドラム式洗濯機で衣類を洗う際、洗濯物の適正量を守ることは、性能を最大限に引き出すための基本となります。結論から言うと、洗濯物の量には明確な目安が存在します。
それは、ドラム式特有の「たたき洗い」という洗浄方式に深く関係しています。
ドラム式洗濯機は、ドラムを回転させて衣類を上まで持ち上げ、下へ落下させる際の衝撃を利用して汚れを落とします。
この効果を十分に発揮させるためには、衣類がドラムの中で自由に動けるだけの「空間」が不可欠です。
具体的には、洗濯だけを行う場合は、洗濯槽の7〜8割程度が適切な量の上限と考えられます。
一方で、洗濯から乾燥までを一貫して行う場合は、ドラムの半分(5割)程度までが理想的です。乾燥工程では、温風が衣類全体にムラなく行き渡るための、より多くの空間が必要になるからです。
1日に1人が出す洗濯物の量は約1.5kgが目安とされています。(メーカー基準)
これを基に計算すると、4人家族の場合は1日あたり約6kgとなり、これは多くのドラム式洗濯機が設定している乾燥容量とほぼ一致します。
つまり、毎日の洗濯であれば、適正量を守ることで効率的に洗濯から乾燥までを完了させられるのです。
表1:衣類の種類別 重さの目安
衣類の種類 | 重さの目安 |
ワイシャツ・ブラウス | 約200g |
Tシャツ・肌着 | 約110g~130g |
パンツ(長ズボン) | 約400g |
パジャマ(上下) | 約500g |
バスタオル | 約300g |
フェイスタオル | 約70g |
靴下(1足) | 約50g |
シーツ(綿) | 約500g |
このように、衣類ごとの重さを把握しておくと、より正確に洗濯物の量を管理しやすくなります。

「あまり入らない」は勘違い?
「ドラム式洗濯機は縦型に比べてあまり洗濯物が入らない」と感じることがあるかもしれません。
しかし、これは洗浄方式の根本的な違いから生じる感覚であり、必ずしも容量が小さいわけではありません。
前述の通り、ドラム式は少ない水と「たたき洗い」で洗浄します。このため、衣類が動くスペースの確保が見た目の容量感に影響します。
一方、縦型洗濯機はたっぷりの水流で衣類をこすり合わせる「もみ洗い」が基本です。水を多く使うため、衣類がある程度密集していても洗浄力を維持できます。
この違いから、同じ10kgの容量でも、ドラム式の方が少なく入れなければならないように感じられるのです。しかし、これは性能を引き出すための正しい使い方にほかなりません。
ドラム式洗濯機の優れた節水性能も、この「少ない水で効率的に洗う」仕組みの恩恵です。
見た目の感覚だけで詰め込んでしまうと、節水という大きなメリットを損なうだけでなく、洗浄力の低下を招いてしまいます。
したがって、「あまり入らない」と感じるのは、ドラム式洗濯機がその性能を正しく発揮するためのサインと捉えることが大切です。

乾燥ムラと気になる運転音の原因
洗濯物をぎゅうぎゅうに詰め込む行為は、乾燥品質の低下と不快な運転音の直接的な原因になります。これらは多くの利用者が抱える不満点ですが、そのメカニズムを理解することで未然に防ぐことが可能です。
乾燥がうまくいかない理由
ドラム式洗濯機の乾燥機能は、温風をドラム内に送り込み、衣類を回転させながら水分を蒸発させる仕組みです。
衣類を詰め込みすぎると、巨大な塊となってしまい、温風がその中心部まで全く届かなくなります。
その結果、パーカーのフードやポケット、厚手のズボンの縫い目といった乾きにくい部分が湿ったままの「生乾き」状態になってしまうのです。
また、洗濯機に内蔵されているセンサーが、表面の乾いた部分だけを検知して「乾燥完了」と誤判断し、実際には乾いていないのに運転を終了させてしまうこともあります。
生乾きの衣類は不快な臭いの原因となり、結局は追加で乾燥運転を行うことになり、電気代の無駄にも繋がります。
運転音が大きくなる理由
洗濯運転中、特に脱水工程で「ガタガタ」「ゴトゴト」という大きな音が発生する場合、その多くは洗濯物の偏りが原因です。
規定量を超えた重い洗濯物がドラムの片側に寄ってしまうと、高速回転する際に大きな遠心力がかかり、本体が激しく揺れます。
これは洗濯機が自動でバランスを調整しようと試みているサインですが、この状態が続くと、ドラムを支える軸受(ベアリング)やサスペンションといった部品に深刻なダメージを与えかねません。
騒音は、単に不快なだけでなく、洗濯機本体が発する危険信号と認識する必要があります。

入れすぎ故障と突然の水漏れリスク
洗濯物の詰め込みすぎは、単に洗濯の質を落とすだけでなく、高価な洗濯機そのものの寿命を縮め、予期せぬトラブルを引き起こす可能性があります。
特に「故障」と「水漏れ」は、経済的にも精神的にも大きな負担となり得ます。
入れすぎが招く故障のメカニズム
ドラム式洗濯機の心臓部であるモーターは、重い洗濯物と水を含んだドラムを回転させるために大きな力を必要とします。
規定容量を大幅に超えた洗濯は、このモーターや、動力を伝えるベルトに常に過剰な負荷をかけ続ける行為です。
このような状態が続くと、モーターの焼き付きやベルトの摩耗・断裂といった重大な故障につながるおそれがあります。
また、回転バランスが崩れることで頻発するエラーや運転停止は、基板に負担をかけ、電子部品の故障を誘発することも考えられます。
これらの修理には数万円以上の高額な費用がかかるケースも少なくありません。
水漏れに繋がる危険な連鎖
ぎゅうぎゅう詰めの洗濯は、洗浄力が不十分になるため、衣類から出る糸くずやホコリの量が通常より多くなります。
これらのゴミは、排水経路の途中にある「排水フィルター(糸くずフィルター)」に溜まりますが、量が多すぎるとフィルターを完全に詰まらせてしまいます。
排水経路が詰まると、洗濯機は正常に排水できなくなり、多くのメーカーで排水異常を示すエラーコード(例:パナソニックの「U11」、日立の「C02」など)が表示されて運転が停止します。
このとき、洗濯槽内に残った水が、排水フィルターの蓋の隙間などから溢れ出し、床が水浸しになるという二次被害を引き起こす危険性があるのです。

縦型とは違う入れ方のコツ
ドラム式洗濯機で洗濯効果を最大限に引き出すためには、適正量を守ることに加え、洗濯物の「入れ方」にもいくつかのコツがあります。
縦型洗濯機とは異なる特性を理解し、少しの工夫を取り入れるだけで、洗浄力の向上やトラブルの予防に繋がります。
まず基本となるのは、洗濯物の偏りをなくし、ドラムがスムーズに回転できるように手助けすることです。重い衣類と軽い衣類をバランス良く混ぜて入れることが鍵となります。
具体的には、最初にジーンズやトレーナーといった重く、かさばる衣類をドラムの奥(下側)に入れます。その後、Tシャツや下着、タオルなどの比較的軽いものをその周りや上に入れていくと、回転が安定しやすくなります。
また、靴下やハンカチといった小物は、洗濯ネットの活用が推奨されます。これは、小物が洗濯槽の隙間やドアパッキンに挟まり、損傷や排水詰まりの原因になるのを防ぐためです。
ただし、このときも注意が必要です。一つの洗濯ネットに衣類を詰め込みすぎると、ネットの中で衣類が塊になってしまい、まったく汚れが落ちません。
ネットに入れる際も、中で衣類が自由に動ける程度の余裕を持たせることが大切です。

必ず守りたい使用上の注意点
ドラム式洗濯機を長く快適に使い続けるためには、洗濯物の量や入れ方以外にも、日々のメンテナンスとして守りたい基本的な注意点が存在します。
これらを習慣化することで、カビの発生を抑制し、常に清潔な状態を保つことが可能です。
洗剤・柔軟剤は規定量を守る
まず最も大切なのが、洗剤や柔軟剤を入れすぎないことです。「汚れがひどいから」と多めに入れても、洗浄力は向上しません。
むしろ、ドラム式洗濯機は少ない水で洗うため、溶け残った洗剤が衣類や洗濯槽に再付着し、黒ずみやカビの栄養源になってしまいます。必ず製品に記載されている使用量を守りましょう。
洗濯後のドアは開けておく
洗濯が終了した直後の洗濯槽内は、湿度が高くカビが繁殖しやすい絶好の環境です。洗濯物を取り出したら、すぐにドアを閉めずにしばらく開けたままにして、内部の湿気を逃がしてあげましょう。
これにより、カビや嫌な臭いの発生を大幅に抑制できます。
定期的な清掃を心掛ける
目に見える部分の清掃も欠かせません。
特に、ドアのゴムパッキンの内側は、濡れた糸くずや髪の毛が溜まりやすく、カビの温床となりがちです。洗濯後は毎回、乾いた布でさっと拭き取る習慣をつけましょう。
加えて、週に一度は排水フィルターのゴミを取り除き、月に一度は市販の洗濯槽クリーナーを使った槽洗浄を行うことが推奨されます。
これらの地道な手入れが、洗濯機の性能維持と衛生管理に直結します。

ドラム式洗濯機のぎゅうぎゅう詰め問題を解決する完全ガイド
容量12kg・11kgモデルの目安
最近のドラム式洗濯機では、洗濯容量12kgや11kgといった大容量モデルが人気を集めています。
しかし、これらのモデルを選ぶ際に最も注意すべき点は、「洗濯容量」と「乾燥容量」が異なるという事実です。
この違いを理解しないまま使用すると、大容量のメリットを活かせないばかりか、トラブルの原因にもなります。
例えば、洗濯容量が12kgのモデルであっても、乾燥容量は6kgや7kgに設定されていることがほとんどです。
これは、前述の通り、洗濯工程よりも乾燥工程の方が、衣類をふんわり乾かすためにより多くの空間を必要とするためです。
したがって、洗濯から乾燥までを一つのコースで連続して運転する場合、投入できる洗濯物の上限は、小さい方の「乾燥容量」に合わせる必要があります。
洗濯容量の12kgギリギリまで衣類を入れてしまうと、乾燥工程で確実に容量オーバーとなり、生乾きや酷いシワ、消費電力の増大を招いてしまいます。
容量12kg・11kgのモデルは、4人以上の家族や、シーツや毛布などの大物を頻繁に洗いたい家庭にとって非常に便利です。
ただし、それはあくまで「洗濯」における容量です。
もし2日分の洗濯物(約12kg)をまとめて洗い、その全てを乾燥させたい場合は、洗濯後に一度半量を取り出し、2回に分けて乾燥運転を行うといった工夫が求められます。

パナソニック、シャープ、日立などの違い
国内の主要家電メーカーであるパナソニック、シャープ、日立は、それぞれ独自の技術でドラム式洗濯機の付加価値を高めています。
洗濯物をぎゅうぎゅうに詰めることで発生しがちな問題に対し、各社がどのようなアプローチで解決しようとしているかを知ることは、機種選びの参考になります。
パナソニック:「スゴ落ち泡洗浄」と「はやふわ乾燥」
パナソニックの強みは、洗剤を素早く泡立てて繊維の奥の汚れにアタックする「スゴ落ち泡洗浄」です。これにより、少ない水でも高い洗浄力を実現します。
また、液体洗剤や柔軟剤、おしゃれ着洗剤、さらには酸素系液体漂白剤まで自動で投入してくれる機能を搭載したモデルもあり、利用者が洗剤を入れすぎる失敗を防ぎます。
乾燥機能では、大風量でシワを抑えながら乾かす「はやふわ乾燥」が特徴です。
日立:「風アイロン」と「らくメンテ」
日立の代名詞とも言えるのが、高速の風を吹きかけて衣類のシワを伸ばしながら乾燥させる「風アイロン」です。
アイロンがけの手間を大幅に削減できると人気ですが、この機能もドラム内に衣類が舞うスペースがあってこそ最大限に効果を発揮します。
また、従来は乾燥のたびに手入れが必要だった乾燥フィルターをなくし、糸くずフィルターに集約させた「らくメンテ」構造を採用したモデルもあり、日々のお手入れを簡略化しています。
シャープ:「液体洗剤自動投入」と「乾燥フィルター自動おそうじ」
シャープは、AIoT機能を活用し、天気情報などと連携して最適な洗濯を提案するモデルを展開しています。
パナソニックと同様に液体洗剤の自動投入機能を搭載し、入れすぎを防ぎます。お手入れ面では、乾燥運転で発生するホコリを自動でかき集めてくれる「乾燥フィルター自動おそうじ」機能が便利です。
これにより、面倒なフィルター掃除の頻度を大幅に減らすことができます。
ただし、これらの便利な機能も、洗濯物の詰め込みすぎという根本的な問題を解決するものではありません。
どのメーカーの機種を選ぶにせよ、適正量を守って使うことが大前提となります。

根本的な原因と具体的な対策
ドラム式洗濯機をぎゅうぎゅうに詰めてしまう行動の裏には、「洗濯の回数を減らして、時間や光熱費を節約したい」という心理が働いていることがほとんどです。
しかし、これまで見てきたように、この行為は期待とは逆に、再洗濯や追加の乾燥、アイロンがけといった余計な手間とコストを生み出してしまいます。
この負のスパイラルを断ち切るための根本的な対策は、日々の習慣を見直すことにあります。
まず、物理的な対策として有効なのが、洗濯カゴを複数用意することです。
「通常洗い用」「おしゃれ着・ネット洗い用」のように、脱いだ時点で仕分けをしておくと、洗濯機に入れる前の手間が省け、一度に洗う量を意識しやすくなります。
次に、洗濯物そのものを減らすという視点も大切です。例えば、吸水性の良い大きめのフェイスタオルを導入し、かさばるバスタオルの使用をやめるだけで、洗濯物の体積は劇的に減少します。
また、一度着ただけのアウターや汚れの少ないズボンなどは毎回洗わない、といった着方のルールを見直すことも、洗濯の総量を減らす上で効果的です。
「まとめ洗い」という言葉の正しい理解も求められます。
まとめ洗いは、あくまで「適正量の範囲内で洗濯回数を減らす」ことであり、「一度に限界まで詰め込む」ことではありません。
この認識を改め、ドラム式洗濯機の仕組みに合わせた使い方を習慣づけることが、最も確実な対策と言えます。

【結論】ドラム式洗濯機のぎゅうぎゅう詰めはデメリットのみ
この記事を通して解説してきた重要なポイントを、以下にまとめます。